別話




  注意書き

 この話は、かなりふざけています。特に後半がひどいです。
 もちろん自分では結構気に入っています。しかし、注意書きは必要ではないかと思いました。
 二次創作だと言ってしまえばそれまでなのですが、設定など原作ではありえないことを平気でやっております。お読みになると、気分を害する方がいらっしゃるかもしれません。
 それでも良い!という大きなお気持ちの方、どうぞ先へお進みください。







〇まずは、内殿近くにて



「こちらが、主上の官服で、こちらが冢宰の官服です。それでは、よろしくお願いいたします」

 祥瓊は、重朔より知らされた事態をあらかじめ予測していた。



「まったく、陽子は天気も確かめずに出て行ってしまうんだから!」

「あら、祥瓊。仕方ないじゃない? 昨日はあんなによいお天気だったんですもの」

「そうねえ。でも、この季節は結構通り雨が降るでしょ、鈴だってよく知っているじゃない?」

「そ。色々言われているけど、景王はそう頻繁に下界へはおりてないって事よ。だから、細かい季節の移り変わりはわからないんだわ」

「そうよね。どこで、大雨が降って川が決壊するか、なんて言うことはよく知っているんだけど」

「でも、祥瓊はさすがだわ。ちゃんとひとそろいずつ、お二人の服を用意しているなんて。しかも、油紙で包んで。りっぱりっぱ」

「ふふ、ありがとう鈴。慣れてきたわよ、陽子の世話も。冢宰とお出かけになるときは特に、気合いが入りすぎて、陽子は細かいことに気がつかなくなってしまうから」

「そうね。風邪ひいたりしないといいけど?」

「お二人とも、お忙しいから……」





〇仁重殿にて



「班渠」

「御前に」

「重朔に包みを持たせて、お前が乗せて、できるだけ早く舎監に服を届けなさい。重朔、村時雨に服がぬれないように、班渠の背で抱えていなさい」

「「かしこまりました」」

そういって、景麒に命じられた二人、いや二匹の使令は、すぐに引き返したのだ。





〇舎監にて



「おい、あの屋根じゃないか?」

「そうだ、さすがは班渠。驚くほどの早さだな」

「まあな、おや? この雨の中、窓が開いているぞ??」

「うん、誰か外を覗いている。おい、ちょっと様子を見ないか? 俺、嫌な予感がする」

「へ? 重朔?? どういう意味だ? 嫌な予感なら、逆に急いでいった方が……」

「いいから、班渠。あの、窓が見える位の位置で、そっととどまれるか?」

「ああ、重朔。姿はお互いに隠せば問題ないと思うが、その包みは大丈夫か?」

「俺が抱え込むから」

「よし、ではあの木のてっぺんに止まるぞ」

 二匹は、景色の中に、自分の姿をとけ込ませる。

「お二人は、仲がよろしいよなあ」

「班渠~~~ お前、意外とのんきだな」

「なんだよ、重朔は」

「前の予王の時だって、台輔にぞっこんだったじゃないか。それで、あんなに国が荒れたんだぜ?」

「でも、台輔はぜんぜん感じてなかったみたいだぞ。それがそもそもの原因じゃないのか?」

「あれ? おい! 班渠。あれを見ろ!」

「え? なんだよ。悪いだろ? じろじろ見たら……え、ええええ!!」

 景王が冢宰の胸に飛び込んだ。その背を冢宰は優しく支えると、もう一方の手で、開いていた窓をそっと閉めたのだ。

「ちょっと待てよ、重朔。お二人は、あんな関係だったっけか?」

「んな訳無いだろ! 班渠。今、ああなったんだよ。い!ま!」

「おい、まずくないか? どうするんだよ!」

「うるさいな! だから嫌な予感がするって言ったろ?」

「そんなこと言ったって、重朔。このままでいいのか?」

「良いのか、悪いのか、それが問題だ」

「重朔!! 馬鹿なことを言ってないで、どうするか決めないと……」

「だって、班渠。俺たちそういった指示は受けてないぜ」

「まあ、そうだけど…… いや、でもこのままだと主上は??」

「そうなんだよな。何が最善かなんて、俺たちにはわかんないよな」

「重朔、しかたない。この包み、渡そうぜ?」

「そうだな、班渠。お前頼むよ」

「へ? 俺?」

「ほら、村時雨がやんだよ。口にくわえても、服の包みはぬれないぜ。おれ、台輔に早く帰ってこいって言われてるんだよな」

「ちょっと待てよ、じゃあ俺がお二人の間にはいるのか?」

「見計らってやるからさ。主上もあんまりたくさんの使令に見られたくないんじゃねえの?」

「そうかあ? 俺、重朔にはめられているような気がするけど」

「気のせいさ。じゃあ、窓の所に寄ってくれ」

「ほいよ」

 重朔は、班渠に包みを渡し、班渠はそれを口にくわえた。

 ふたりは、いや二匹はそうっと先ほど閉まった窓のそばによる。

 中は、しんと静まりかえっている。

 ほどなくして、微妙な衣擦れの音と、息を吐く音が聞こえた。

「今だ!」

重朔はそういうと、さっさと遁行していってしまった。

 いささか重い心持ちで、班渠はその窓に向かって声をかけた。

「主上!」



 重朔は本当に、景麒に早く帰ってこいと言われていたのか、定かではない。

 しかし、視察に同行した班渠は、二人の関係が少し変わったように感じたという。

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